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  • 執筆者の写真杉山信二

隣地の協力で出来た補強工事


 砂岩の練石積み(変状部分から確認)の表面にモルタルを薄く吹いていた現場です。石積みが動いて上部の家屋も動いたと考えられる変状が確認されました。

 踏査等を含めた調査により原因を探した結果、主となる原因は風化防止の目的と考えられるモルタル吹付に水抜きがないことでした。

 水が抜けなくなる施工を行った場合、降雨などの水が石積みから排出されない状態となるため、石積みの背面に水が溜まることによって水圧が掛かってしまいます。また、背面の土砂が通常は自立できていたものと仮定しても水位の上昇で飽和状態となるため、土砂の粘着力が大幅に低下して自立できない状態となり、大きな力で石積みを押すこととなります。


 この現場は練積みのためモルダム工法が使用できません。また、隣地は新築住宅が建築された状態であるためロックボルト等を施工することも出来ない(高価な工事になることも含め)状態でした。

 しかし、幸いにも隣地の所有者が安全のためとして「越境での構造物施工」を許可してくださったことで減災工事を行うことが出来た現場です。





 新しく張りコンクリートが設置されていたため、宅地も入念に養生を行いました。






モルタル吹付はラス網もない素吹きで、更に薄吹きであったため比較的簡単に除去できました。





水抜きや補強筋を設置して「もたれ擁壁」を造ります。






2m以下ですが高さがあるため生コンの打設は2回に分けて行いました。





 この様に隣地所有者の方の協力が得られることは稀です。

「越境しても安全のため」と擁壁の設置を許可してくれた数少ない現場です。


 この現場は崩壊に至る前に補強工事ができましたが、間違った施工を行ったことよって崩壊してしまった現場は数多くありますので、安易に対策工事を行うのではなく、専門家の見解に基づいた工事を行って頂きたいと切に思います。


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