国土交通省は、「擁壁は築造から20年経過した頃から急激に老化が進み、50年以上のものは4割で補修工事が必要とされる」と発表しています。
その老朽化した擁壁が本当に危険なのかどうか、一般の方でも一目で判る擁壁の見分け方の一例をご紹介致します。
通常擁壁は、型枠を組んで生コンを打設する製造方法のものや、糸を張ってその糸に石の角を合わせて積み上げる工法などが多いため、天端(擁壁の上部)は直線の多い仕上がりとなります。
また、擁壁の上部には空洞ブロックを積むことが多いため、その天端部分を側面から見通すと直線になっていることが分かります。写真のように空洞ブロックの角が一直線になっている場合は、擁壁もしくは空洞ブロックの築造後大きな動きはないと考えられます。
例えば写真のようにブロックやフェンスが膨らんでいる場合、内部からの側圧で擁壁が押されている状態であると考えられます。
空洞ブロックや擁壁の中間部分が下がっている場合は、擁壁そのものの不具合や地盤が沈下している可能性もある変状です。
谷側にあるブロックや擁壁が拝むように下がっている場合は、変状部分から先の谷側斜面が動いている可能性が高いと考えられます。
次に自然石の石積み擁壁です。
一番強い積み方だと言われている積み方は写真のような寺勾配(弓なりに反る勾配)の積み方です。もちろん直線的に積まれたものも多いのですが、寺勾配で積まれた石積みの崩壊はかなり少ないように感じています。
石積み擁壁の変状として直ぐに目に付くのは目地部の亀裂やモルタルの剥がれ落ちですが、ここで注意したいのはその内部です。
写真のように亀裂や目地部から土砂が見えている擁壁は良いとは言い難い状態です。
築造当初より造りそのものが粗雑なものもありますが、石積み擁壁として構造上侵入してはいけない部分に土砂が入り込んでしまった状態となっています。
また、部分的に積まれた石が押し出されたように飛び出ているものも危険な状態です。
特に危険な変状は、膨らんでいるものであり、早急に対処しなければならない非常に危険な状態であるとお考え下さい。
過剰に心配する必要はないかも知れませんが防災意識を高めることは大切なことだと思います。
擁壁は定期的な点検も必要ですし、ご心配な場合には必要に応じて調査も致します。
壊れる前に是非私たち専門家にご相談ください。
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